卵巣嚢腫とは
卵巣にできる腫瘍のうち、内容物が入った袋(嚢胞)のような形をしたものを、卵巣嚢腫と呼びます。この卵巣嚢腫はほとんどが良性で、20~30歳代の若年層に多い病気です。袋の中には内容物が詰まっており、子宮内膜症による古い出血がチョコレートのようにたまった卵巣子宮内膜性嚢胞(チョコレート嚢胞)、水分がたまった漿液性嚢胞腺腫、ネバネバした粘液がたまった粘液性嚢胞腺腫、皮膚や毛髪、歯など他の部位の組織がたまった皮様嚢腫などに分類されます。
卵巣嚢腫の症状
卵巣腫瘍は、一般に腫瘍が小さい場合は無症状のことが多く、日常生活に支障を来すことは稀です。卵巣腫瘍があっても月経は順調なことが多く、妊娠にもあまり影響しません。子宮がん検診や内科などを受診した際に、偶然、卵巣腫瘍が発見されることも少なくありません。スカートやパンツのウエストがきつくなったことに気付いて受診し、診断される場合もありますが、太ったためだと思い込み、そのままにしてしまう人も多いようです。
卵巣腫瘍は、直径20cm以上と巨大になることもあります。
腫瘍が大きくなると、膀胱や直腸を圧迫し頻尿や便秘や下肢の浮腫みなどを生じます。
卵巣嚢腫と鍼灸
東洋医学では腫瘍・できもののことを「癥瘕(ちょうか)」といい、「瘀血」(おけつ)が原因となってできると考えられています。
瘀血とは、血液の運行が悪くなって、停滞してできる物質、出血などが局所に停滞してできる物質の総称を指します。瘀血の「瘀」には、「ふさがる」「血の滞る病気」の意味があります。瘀血は、体内のあらゆる場所にできる可能性があるものです。婦人科の場合は、子宮や卵巣に瘀血ができて、筋腫や嚢腫、内膜症になるとイメージするとわかりやすいかもしれません。
瘀血のできやすい体質には下記の3タイプがあげられます。
気滞(きたい)タイプ
健康な状態だとスムーズに流れている気は、様々な原因(外傷、過度の労働による疲労、食の不摂生、過度の緊張によるストレス、精神的ストレスなど)によって徐々に流れが悪くなってしまいます。気の活動が低下すると、気の力を借りて全身をスムーズに流れている血の流れも悪くなり、体内に滞りができ瘀血となります。
痰湿(たんしつ)タイプ
甘いもの、冷たいものの取りすぎや油っこいものを食べるなど、食生活の乱れが続くと、循環をスムーズにさせる役割を担っている脾胃が損傷されてしまい、体内の消化機能がうまくできなくなってしまいます。その結果体内に水、油がたまり痰や湿と呼ばれ、むくみや脂肪の原因となります。
これらは、気の流れを阻害するので、血の流れが悪くなり瘀血が形成されます。
血寒(けつかん)タイプ
長時間寒い環境にいたり、冷たいものばかりを好んで食べたり、体が慢性的に冷えてくると、血の通り道である血脈が収縮し、血の流れが渋滞しやすくなります。血の滞りが慢性的になると、局所的に瘀血ができてしまいます。
卵巣嚢腫は劇的にすぐに消えるということはないが、ケアすることによって大きくなりにくくなったり、浮腫みが改善したり、まれに卵巣嚢腫が小さくなることもあります。再発防止を防ぐ観点からも股関節を緩めておくと良いと思います。不妊症でお悩みの方にも卵巣嚢腫がある方が多いのは臨床経験上感じています。個人差があるので卵巣嚢腫が消失するとは断言できませんが、なぜそこに卵巣嚢腫ができるのかを考えて頂くと良いと思います。卵巣嚢腫ができにくい身体作りはお手伝いできると確信しています。
卵巣嚢腫の鍼灸整体治療症例
症例1:30代
不妊治療で来院され、卵巣嚢腫あり。股関節の緊張が強く、子宮付近で血流が滞っているようで足回りも非常に重く、浮腫みも強く出ているこの方の場合は、気滞、痰湿タイプだったので、食事指導も実施。すると浮腫みが軽減されてきて、妊娠に至り、卵巣のう腫は小さくなっていました。