【刺さない鍼】は効果がないのか？

2021.10.15

皆さん、鍼と聞くと『痛そう』、『怖い』というイメージで毛機嫌いしている方も多いと思います。

仕方ないですよね。

だって、今までの人生で注射針とか縫い針とか痛い経験をしてきたことがあると思います。

実際の鍼治療を経験したことがある人も運が悪く、痛い鍼を経験してしまったら、『あ～やっぱり、鍼は痛いんだな』って思いますよね。

今回は、鍼灸治療の中でも、『刺さない鍼』について書いていきます。

刺さない鍼とは

『黄帝内経』（中国最古、紀元前２０２年頃から書かれ始めたとされる医学書）の中に「九鍼」という九つの鍼の種類が書かれています。病に対しそれぞれの鍼を使い分けて治療をするという記述があります。刺さない鍼、てい鍼（鍉鍼）は、その中の一つです。

てい鍼（鍉鍼）は、２０００年以上も前に、体質や疾病の種類によって、体に損傷をあたえずに治療できる、また、強い刺激を与える事によって、かえって症状が悪化してしまう患者に対して、按じたり、摩したりなどの弱刺激でも症状が改善できるものとして作り出したのではないかと言われています。

鍼灸治療とは、経絡、気血の流れをいかに効率良く調整するかという治療です。だから、鍼を体に刺さなくても、刺さない鍼で十分症状を改善させる事ができたと考えられます。

つまり、刺さない鍼とは、皮膚を貫通させないで接触刺激をする治療法ということです。

刺さない鍼の効果とメリット

まずは、普段、鍼灸治療を敬遠してた方でも、刺さない鍼灸治療なら恐怖心もなく安心して受診できるという点が挙げられます。

そして、刺さない鍼治療では、使い方や症状次第では刺す鍼灸治療より効果的な場合があります。

例えば、お子様に施術を行う場合、通常の鍼灸治療だと恐怖心のため治療をするのが難しくなりますが、接触鍼の治療だと痛みを伴わず、リラックスしながら治療をすることができます。鍼灸治療をお子様に行う鍼を、小児はりと言います。

効果としては、夜泣き・かんのむし・消化不良・食欲不振・不眠・小児喘息・アレルギー性湿疹・夜尿症・虚弱体質の改善を期待することができます。

また、最近では、美容目的に応用できる接触鍼もあり、その効果に注目が集まっています。

刺さない鍼のデメリット

よく患者さんから聞くのが、刺さない鍼専門の鍼灸院に行ったのだが、効果が良く分からないという声を聞きます。「刺さない鍼は効果がない」などと言う方もいます。

実際その方の身体をよくみると筋肉が強く緊張していることが多く、刺さない鍼では対応できない場合にそのようにおっしゃる方が多いです。人によって刺す鍼が良い場合と刺さない鍼が良い場合があるので、その方の皮膚や身体の反応を良く観ながら当院では臨機応変に使い分けています。

ふくもと治療院での刺さない鍼での鍼灸治療

渋谷にある鍼灸整体、ふくもと治療院には年配の方から子どもまで幅広い年代の患者さんが来院されます。

その中で、刺さない鍼を使用し治療をすることが多いのは、子どもの治療です。

夜泣きや、疳の虫、車酔い、夜尿症、おねしょ、乳児湿疹、アトピーなどの治療に使用します。

痛みは全くなくリラックスして受けられるので、最初は院長の私に怖がり泣いてしまうお子さんも時々いますが、慣れてくるとにこにこお話ししながら治療を受けてくれます。

また親御さんにホームケアが出来るように、銀製のスプーンを使っての施術の仕方なども指導します。

刺さない鍼を使っての鍼灸治療症例

１歳のお子さん、一週間前から乳児湿疹が出始め、薬を塗ったり保湿をしてもなかなか良くならないと、ご紹介で来院されました。

問診でお母さんからお話を聞くと、「痒みがあるため、顔にも引っかき傷が出来てしまい、夜中に何度も泣いて起きている」とのことでした。

お母さんも睡眠不足のため、かなりお疲れのようでした。

初診はお母さんにお子さんを抱っこしていただき、刺さない鍼で治療しました。お母さんに抱っこされているから、安心して泣くこともなく治療を受けてくれました。

一週間後にまた来院した時には、顔の湿疹はほとんど良くなっていました。お母さんから、「治療を受けた日は、朝までぐっすり寝てくれて、私も久しぶりに朝まで眠れました！」とお話してくれました。

刺さない鍼のまとめ

鍼灸治療と聞くと、まだまだ痛そうと感じる方が多いと思います。

しかし、鍼灸治療の中には、『刺さない鍼』など全く痛みは感じない治療法もあります。

また、逆に、鍼治療は刺さないと効果がないと思っている方もいるかもしれません。

患者さん一人一人の体に合わせて、治療の刺激量を変え、適切なツボに施術をすることで、刺さない鍼でも十分な効果を出すことが出来ます。